眼科クリニックの待ち時間は、医師の診察速度だけでは決まりません。受付、予備検査、OCTや視野検査、散瞳、診察、説明、会計という複数の工程があり、患者ごとに通る経路も異なります。
そのため「診察を速くする」「予約枠を減らす」といった単独施策では、別の工程に詰まりが移るだけの場合があります。本記事では、眼科の待ち時間を工程別に測定し、診療品質を維持しながら改善する方法を解説します。
眼科の待ち時間は「患者数」ではなく、「時間帯別の到着」「必要検査」「機器」「散瞳」「人員配置」の組み合わせで発生します。総滞在時間を工程別に分解し、最も長い工程から限定的に改善します。
眼科で待ち時間が長くなりやすい理由
- 患者によって必要な検査が異なる
- 散瞳後に一定の待機時間が必要になる
- OCTや視野計など特定機器に患者が集中する
- 予約患者と予約外患者が同時に来院する
- 術前術後患者と一般外来が同じ時間帯に重なる
- 検査や説明がORT・経験者に集中する
厚生労働省の受療行動調査でも、外来患者の待ち時間や満足度は調査項目になっています。ただし同調査は一般病院が対象であり、個別の眼科クリニックの適正待ち時間を示すものではありません。自院で実測することが必要です。
最初に測定する5つの時間
| 工程 | 開始 | 終了 |
|---|---|---|
| 受付待ち | 来院 | 受付完了 |
| 検査待ち | 受付完了 | 最初の検査開始 |
| 散瞳・追加検査 | 点眼・検査指示 | 診察可能状態 |
| 診察待ち | 必要検査完了 | 診察開始 |
| 会計待ち | 診察・説明終了 | 会計終了 |
平均値だけでなく、中央値と長時間滞在患者を確認します。散瞳患者と非散瞳患者、初診と再診、検査予約あり・なしも分けます。
1.来院時間の集中を減らす
同じ30分間に患者が集中すると、受付、検査、診察のすべてが遅れます。予約時刻別の来院人数を確認し、実際の検査所要時間に合わせて枠を設計します。
疾患・検査別の予約枠
一般再診、緑内障視野検査、術前検査、術後診察、小児、コンタクトレンズ等を同じ時間幅で扱わず、必要工程に合わせて予約枠を分けます。
予約外患者の受入ルール
急性症状を含む予約外患者に対応できるよう、当日枠と緊急度を確認する手順を設けます。予約外患者を断ることではなく、予測不能な集中を減らすことが目的です。
2.検査のボトルネックを外す
機器別の稼働状況を確認
OCT、視野計、眼底カメラ、眼軸長測定装置等について、30分単位の実施件数と待ち人数を確認します。装置台数だけでなく、担当者、部屋、データ転送、清掃、次患者の準備も確認します。
検査を並行化する
すべての患者を同じ順番で検査すると、特定機器の空きを待つ間に他の装置が空くことがあります。医師の指示と院内ルールに基づき、患者ごとの検査順を調整できる運用を検討します。
3.散瞳患者の動線を分ける
散瞳後の患者が一般患者と同じ待ち列に入ると、診察順が分かりにくくなります。点眼時刻、診察可能時刻、追加検査、呼出状況を共有できる方法を作ります。
- 散瞳患者の待機場所を明確にする
- 点眼時刻と目安時刻を記録する
- 診察可能になった患者を一覧化する
- 外出可能な場合の戻り方を案内する
4.医師・ORT・受付の役割を整理する
医師に診断・適応判断・医学的説明以外の確認が集中していないかを調べます。一方で、単に業務をスタッフへ移すのではなく、資格、法令、安全性、院内プロトコールを確認した役割分担が必要です。
検査スタッフのスキル差を可視化
特定検査を担当できる職員が少ないと、その職員の休憩・欠勤・他業務で外来が止まります。スキルマップを作り、教育順序と習熟確認を設定します。
5.説明と会計の滞留を減らす
診察後に、次回検査予約、手術案内、点眼説明、会計処理が集中することがあります。診察前に準備できる項目、医師の判断後に行う項目を分けます。
疾患や手術の一般的な案内資料、次回受診の説明、院内掲示を整備すると、同じ質問への対応時間を減らせます。ただし個別の医学的説明を資料だけで代替しないことが重要です。
6.患者への待ち時間案内を改善する
実際の待ち時間をゼロにできなくても、待つ理由と目安が分かると患者の不安を減らせます。
- 受付時に検査・散瞳の有無を説明
- 遅延が生じた場合に目安を案内
- 順番表示や呼出通知を活用
- 外出・再入室のルールを明確化
- 高齢者や視覚に不安がある患者へ個別配慮
改善効果を測るKPI
| KPI | 確認方法 |
|---|---|
| 総滞在時間 | 来院から会計終了まで。患者区分別に確認 |
| 工程別待ち時間 | 検査、散瞳、診察、会計に分解 |
| 予定時刻との差 | 予約時刻と検査・診察開始時刻の差 |
| 時間外労働 | 職種・曜日・業務内容別に確認 |
| 問い合わせ・苦情 | 待ち時間に関する内容と発生時間帯 |
| 再検査・インシデント | 速度改善で品質が低下していないか確認 |
待ち時間短縮だけを追うと、検査品質、説明、患者安全、スタッフ負荷が悪化する可能性があります。再検査、説明不足、時間外労働、患者からの意見も同時に確認してください。
4週間で行う改善手順
- 代表的な曜日を選び、患者ごとの時刻を記録
- 散瞳・非散瞳、初診・再診、検査別に分類
- 最も長い待ち工程を一つ選ぶ
- 予約枠、担当、検査順等を限定的に変更
- 変更前後の待ち時間と現場負荷を比較
- 問題がなければ対象曜日・時間帯を拡大
まとめ
眼科クリニックの待ち時間は、受付、検査、散瞳、診察、説明、会計のどこで発生しているかを分けて確認します。
予約枠だけを減らすのではなく、必要検査、機器稼働、人員配置、患者案内を組み合わせることで、診療品質と現場負荷を守りながら改善できます。
受療行動調査は一般病院を対象とした調査です。本記事では全国値を眼科診療所の目標値として使用せず、待ち時間を経営・運営上確認すべき項目として参照しています。
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